コンセプト
出会ったクライエントを「尊重」し、ひとりひとりを価値のある存在として意識していきたいというマインドです。発達障害や精神障害、LGBTといった人たちのお話を伺っていくと、彼らなりに生きてきた物語のすみずみに、他の存在では変えられない価値を感じます。もちろん、彼らを受け入れがたい思いがでてくることもあるかもしれません。それが即いけないというのではなく、そうした思いを抱きながらも、こころの別なところで、このクライエントを大切にできたら、という思いをもっていこうというあり様のことです。
Respectというのは、
Unconditional Positive Regardという概念で耳にしたことがある方もいるでしょう。無条件にクライエントとその世界に「関心」を傾けていくというマインドです。これは、必ずしも100%理解できているということ、受容できていること、というものではありません。理解できている以上に、理解できていないことがあることにも意識を向けて、受け入れがたい思いがあることにも気付きながら、だからこそ、もっと知っていきたいとまなざしをむけていけるあり様です。
Regardという言葉は、
内省とも省察とも訳されることがありますが、率直な「自分との対話」というマインドです。PCAのカウンセラーの姿勢として自己一致という概念がありますが、クライエントをありのままに受容する前に、まずは自分自身に正直になり、自分の嫌な部分にも目をつぶらず、大切にしていこうとするあり様です。これも、100%できていないといけないということではなく、その大切さ、その意味というものに開かれている心のあり様です。
Reflectというのは、
Respondというのは
応答することですが、これは正しい答えを出すとか、何かをしてあげるということではなく、そばにて「応える」というマインドです。クライエントの中の声、それは時にほとんど聞き取れないようなものであるかもしれませんが、そんな声にひたすら傾聴して、そこにいるというあり様です。声を聴いて言われたことをするということでもありません。また、声を出せる力を信じず、代わりに声を出してあげるということでもありません。何かをするという以上に、そばにいて、クライエントを孤立させないというあり様です。
私の恩師、佐治守男先生や穂積登先生がおっしゃっていたマインドです。私は、彼らから、悩まなくなるよりも、安心して悩める関係を提供することの大切さを若いころ教えられました。どんな感情も感じてはいけないものはありません。ですが、ネガティブな感情を一人で抱え込んでいることは生きる力を脅かすこともありえます。でも、信頼できる支援者とともにいれば、悲しみも怒りも、みじめさも寂しさも、そのまま体験していくと、いつしか心が軽くなっていき、生きる力を得ることができるのだということを40年違い臨床の現場でみてきました。